「丸め込む」という日本語はどんな印象を持っていますか。他の言い方に変えると「言いくるめる」「うまく取り込む」という意味で使われるように、おそらく多くの人たちにとって、相手側を操作的に扱うややネガティブな響きが強いと思われます。手のひらの上、というやつですね。
プロレスでは他の競技と比べて、試合中にこの「丸め込む」というワードや行為が多発します。むしろ丸め込んだり込まれたりするスポーツや競技はプロレスぐらいじゃないでしょうか。
今回はこの「丸め込む」はプロレスでどこまで重要なものか、についてのお話です。

丸め込むってどういう技?
まず、技でいうところの「丸め込み」とはなにかをおさらいしておきましょう。
その形態はさまざまなものがありますが、簡単に言えば、ただ覆いかぶさる態勢ではなく、相手の手足をしっかり掴んだり絡めたりして、身動きがとりにくい状態でフォールカウントを獲りにいく通称「クラッチ」です。これが試合の駆け引きにも、そして試合の決着「フィニッシュ」にもなることが多く見られます。
スモールパッケージホールド。逆さ押さえ込み。ラ・マヒストラル。前方回転エビ固め。ジャックナイフ固め。スクールボーイ。ヨーロピアン・クラッチ。ジャパニーズ・レッグロール・クラッチ。などなど。他にも、各選手オリジナルの丸め込み技は〇〇クラッチと名称される広く使われています。
いずれも大きな技を喰らってKO状態になるというより、一瞬の隙を突かれてコロンと転がされ、そのまま3カウントを奪われるのが丸め込みの大きな特徴で、敗れた選手も体力が残っているため呆然としてしまう光景が付きものです。

丸め込みが生むもの
もちろん、習得するには簡単ではなく、タイミングや支点のコントロール、相手の体重を利用するなど、かなりの熟練選手でないと使いこなせませんし、説得力も生まれません。
ですが、この丸め込みの最大の重要性は、圧倒的な格上や反則尽くしのヒール選手や、大ダメージを受けて窮地に立たされている状況、また出世中の若手選手や軽量級の選手が最後の最後に大逆転で出した丸め込みで 3カウントを奪える、というところです。頻繁には起こりませんが「ジャイアントキリング(番狂わせ)」が目の前で起こった会場の空気は一気に最高潮に達します。
逆に、肉弾戦が期待されている大型選手同士の対戦で、ビッグマッチのメインでの決着で、凶器などでの反則攻撃のすぐ後で、というケースではどんな勝敗のケースでも喜ばれません。丸め込みで盛り上がれる状況かどうかを読み違えるととんでもなく白けたムードになってしまうのです。

技術だけではなく駆け引きとして
そんな便利な技があるならみんな使えばいいじゃん、とお思いでしょうが、丸め込みはそう簡単ではありません。
実は、どんなプロレスラーでも使う技の中ではかなり「成功率が低い」のです。
どんな試合でも使用される技ですが、ほとんどは2カウントで返されたり、丸め込みが未遂に終わって逆に攻撃を受けるというケースが多いです。しかし、この「一発逆転的に決まらないかもしれない技」を繰り出すこと自体に、駆け引き(心理戦)があります。
試合終盤、大技を狙っている選手に丸め込みを仕掛けると、相手は「負けるかもしれない」という強い焦燥感に襲われます。カウント2.9でギリギリ返せたとしても、相手の心の平穏は乱れ、技の精度が落ちたり、冷静さを失ったりします。丸め込みは、相手の「闘争心理」を揺さぶるためのトラップでもあるのです。
というように、丸め込みは技術だけでなく、精神部分でも相手を丸め込まないと成立しない、超高度なテクニックなのです。

丸め込みは知略なり
今回のまとめ。
熟練された丸め込みは
相手も観客も
その場にいる全員の心を丸め込む

プロレスの丸め込みは、肉体のぶつかり合いの中に潜む「知略の結晶」です。
今後観戦するときは、選手たちが繰り出す一瞬の丸め込みにどれほどの技術と心理戦が詰まっているか、そこにも注目してみてください!
では、またここで。

