長期欠場は何のタメ、の話

コラム

大怪我。したくないですよね、大怪我。痛いし、治るまで時間かかるし、動きは制限されるし、いいことなんてひとつもありませんね。
一般社会で生活している中でもそうなんですから、肉体を酷使する職業のプロレスラーにとっては大怪我なんて絶対にしたくありません。長期欠場なんてものは避け続けていきたいでしょう。
ですが、現役中は日々戦うことが宿命であり、観客を熱狂させるアイデンティティと大怪我は表裏一体なのです。今回はプロレスラーにとっての大怪我による長期欠場との向き合い方についてのお話です。

落胆ばかりの長期欠場

年始という節目もあってか、長期欠場から戻ってきたり、海外から帰国したりと、国内団体に復帰する選手が多く現れました。海外遠征での欠場は「計画ありき」なのでまったく問題ないです。ただ、思わぬ怪我による長期欠場は、選手にとっても団体にとっても大きな痛手です。不測の事態が突然起こるわけで、そこには「計画通り」なんてものはありませんから。
予期せぬ長期欠場でのデメリットを挙げると、絶望感しか生まれません。
試合から遠ざかることでファンの記憶から薄れていくのでは。
同期との出世争いに遅れを取ってしまう。
決まっていた試合が出来ず迷惑をかけてしまった。
リング上でのストーリーからこのまま外される。
フリーの選手なら収入も減る。
そもそも復帰してからもこれまでと同じ試合ができるかわからない。
それ以前に怪我が治らず復帰できないかもしれない。
そんな焦りや不安が募るのも当然です。肉体だけでなく精神的にも一番辛い時期かもしれません。
でも実は、この「空白」は同時にとても大きな転換期でもあるのです。今ではなく、そこから数年後を見据えればなおさら。
そこで、メリットとは言えないですが、大怪我による欠場期間で得られる「可能性」を考えてみます。

インプットとリフレッシュができる

まず、普通に試合を続けていたらなかなか取れない時間が手に入ります。
その時間を利用してプロレス以外のジャンルや他の格闘技など、これまでにないインプットができるでしょう。
そして、これまでは痛かったり治らなくても無理して酷使してきた大怪我以外の負傷箇所の治療など、肉体を休めて完全にリフレッシュさせることが可能です。違いが誰でもわかるくらい大きな肉体改造を施してインパクトを得る選手もいます。
試合ができない時間で、試合じゃ得られないものが手に入るのです。

スタイルの見直しができる

また、自身の技の見直しにも充てられます。
これまで当たり前のようにできた技。しかし大怪我もあってこれまで同様の動きができない、避けたい。というなら、ここで選手自身のスタイルの変化ができます。
観客も大怪我をしたことを知っているので、そのスタイルの変化はおおむね受け入れられますし、選手寿命という部分から考えてもその欠場期間が転換期になって長く現役でいられる場合もあります。
当たり前が当たり前じゃなくなったら、その当たり前を見直せばいいのです。
そのスタイルの変化でこれまでなかった観客の反応や支持が返ってくることも多いです。選手も自身のプロレス観が変わって良い方向に傾くことにも期待できます。

期待感が膨張できる

そして、ファンからの期待感が増していきます。
長期欠場で試合ができない間は「今は欠場しているけど、この選手が帰ってきたらどんな展開が起こるのだろう、どんな試合が見られるのだろう」というファンの妄想期間でもあります。
相応しくない言い方ですが、欠場が長ければ長いほど、その期待感は膨らむ一方で、いざ復帰したときにそれが盛大に爆発し、その選手じゃないと作れない熱狂が生まれます。
それができるのも、大怪我という敵に勝って復帰してきたから、こそなのです。

立ち位置を変えることができる

もうひとつ。立ち位置やキャラを変えられます。
予期せぬ欠場期間は人を変えるには重要な時間です。これまでできなかった路線へのシフトチェンジもできますし、ユニットの移動やベビーからヒールに、またはその逆、そういった突然するには難しい方向転換が表に出られないからこそできるのです。
実際それで大きくブレイクした選手も多いですし、今もそれは「休んだ期間を一気に取り戻す」ために用いられます。そうすることで、復帰後すぐに中心へ近付けますし、ファンの注目度も復帰前以上に上がっていきます。

長期欠場は「溜め」

以上が予期せぬ大怪我からの長期欠場で生まれる「可能性」ですが、これらすべてには大事な条件があります。
それは、欠場している選手がどれだけその期間でプロレスと向き合うか、です。
大怪我はマイナスでしかありません。できれば避けたいし、ファンも望んでいません。
ですが、万が一そうなってしまったときに、プロレスラーとして今後どういった自己表現ができるのか、どういった立ち位置でプロレス界を盛り上げたり牽引したりできるか。フィジカルがうまくいかないときこそ、メンタルでのプロレスをファンが見ていない試合以外のところでどこまで研ぎ澄ませるかが重要だと思います。
それができる選手、そのまま挫けてしまう選手、大怪我での長期欠場後はそれが如実に出てきますので、そういった部分でも復帰後の言動や試合は注目に値するのです。
長期欠場を「ただの不幸な出来事」で終わらせるか、「自分をもう一段階上げるための充電期間」にできるかは、その選手自身の姿勢と行動次第です。
怪我は選べません。誰にでも来る可能性があるものです。ですが、その後の時間を使って何をどれだけ積み上げるかだけは、自分で決められます。だからこそ、プロレスラーにとって大きな怪我と長期欠場は、確かに辛くて厳しい試練ではあるけれど、同時に「主役になるための溜め」にもなり得るのです。
それこそが、プロレスラーの「強さ」だと思います。

今回のまとめ。

大怪我による長期欠場は
覚醒するための溜め
誰でも怪我はする
誰でも逆転できる

思わぬことで思うこと

思っていた未来が、思わぬ出来事で、思いもよらない事態に変わってしまうことは、プロレスじゃなくても起こり得ることです。
そのときは大きく傷ついて気持ちもへこんでしまうものですが、そのあとの逆転への溜めにできる!と思えば少しは気も楽になるのではないでしょうか。
でも、一番大事なこと。
大怪我はしない方がいい!それに限ります

では、またここで。

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