プロレス的「郷に入っては郷に従え」、の話

コラム

先日の電車内。大きなスーツケースを持った外国人観光客が数名で優先席を陣取り、そこで缶ビールを飲んで談笑していました。
彼らにとっては楽しい旅の延長とはいえ印象はあまり良くありません。ですが、この行為は犯罪ではなくその国のマナーやルールの範疇です。もしかしたら、インバウンドの人にとっては日本のマナーである優先席も車内飲食も知らなかったのかも…と思うとなおさらもどかしい気分になったのです。
多くの人が日本に来たり他の国へ観光で行っている現代ですが、その国に行くということはその国のルールや風習の知識を多少は学んでおかないとトラブルを招いたり行動にも支障が出たりで、単純に楽しめなくなります。訪問国のマナーは必要最低限でもあらかじめ知っておいた方がベストでしょう。

プロレスでも同じことが言えます。
日本の会場で見るプロレスと、アメリカの会場で見るプロレス。ジャンルに対しての価値観が違うこともあって、同じプロレスでも観客のノリや応援の仕方が異なります。今回は「日本のプロレスとアメリカのプロレス、その試合や観客の相違点と共通点」について書いていきます。

試合スタイルの違い

プロレスは万国共通の文化、とよく言われますが、観客の楽しみ方やプロレスの捉え方、会場内の雰囲気はそれぞれで異なります。ここではわかりやすく日本とアメリカの大手団体をイメージして比較していきます。

日本のプロレスは、俗に言う「ストロングスタイル」。競技寄りです。
パフォーマンス要素は少なからずあれど、まずは「強さありき」です。
そこには闘争心や嫉妬心、殺伐さや技術力、それらが前面に出されます。技の精度だけではなく駆け引き、そして激しさ。それらがないと観客には響きません。
一方でアメリカのプロレスは「スポーツ・エンターテインメント」。ショー寄りです。
もちろん、闘いや技の応酬もありますが、何よりもわかりやすいこと、派手なこと、大きいこと、非日常であることを重視しています。
技術はもちろん大事ですが、それがなくても体格やキャラだけでブレイクする選手も多数見かけます。

ストーリー展開の違い

試合だけじゃなく観客へのアジテーション、ストーリーの伝え方も違いがあります。
日本で観客が見られるアピールは試合後のマイクくらいで、遺恨やライバルという関係性は主にバックステージコメントやインタビュー、最近ではSNSで見ることができます。
観戦する際は事前にそれを予習しておかないと不明確な部分がありますが、試合中に見せる動きや表情を通じ観客へ伝えることが主です。
アメリカはすべてを観客の目が届く場所で行います。
2時間番組で試合は3~4試合、残り半分以上の時間をリング上での選手スピーチやバックステージからの映像でのやりとりに費やしたり、それが試合より盛り上がることも。
テレビ中継が軸なので誰が見てもわかりやすく構成されており、アクロバティックで派手な入場や試合内容も合わせて、そのエンターテインメント性は驚くほど強烈です。

他にも選手の技術や演出スタッフなどたくさん相違点がありますが、このふたつだけでも大きく違うのです。

観戦スタイルの違い

観客の楽しみ方も日本とアメリカでは大きく異なります。
日本はじっくり駆け引きを見て、試合の中盤以降の攻防で大きく盛り上がるケースが多いです。
常に声援が飛んでいる雰囲気ではなく、物音ひとつ立てないシーンとした時間もあれば館内が爆発するくらいの大声援に包まれることも。いわば「緩急のある観戦スタイル」です。
逆にアメリカは静かに見ている場面なんてない、常に何かしらの盛り上がりで思い思いの声援が飛び交い、大騒ぎのまま試合が始まり終わっていく、まさに「踊らにゃ損スタイル」です。

選手の入場でも、日本では選手への声援くらいですが、アメリカではテーマ曲を全員で大合唱します。映像だけで見ても圧巻の光景です。
日本とアメリカの観戦スタイルの違いをざっくりと表現するなら、
立って見ると怒られるのが日本、立って見ないと怒られるのがアメリカ
というべきでしょうか。

違いがあるからルールは大事

以上、簡単ですが主な違いを挙げてみました。
私が思うに「そもそもプロレスに正解はない、100人の選手や観客がいれば100通りの価値感があってそれらすべてが正解なのがプロレス」なんですから、どちらが良いかではなく「どちらも良い」のです。
なので、両国の独特な文化を融合させる必要はないのです。スタイルが自分に合う合わないはそれぞれ個人で決めて所有すれば良いのです。
ただ、海外旅行と同じで、そこ特有の知識、ルールや風習だけでも多少学んでおけば、より一層楽しめるのは間違いないと。そして、他の人に迷惑をかけない。これも万国共通のマナーです。

違いがわかる日米の代表イベント

日本とアメリカのプロレスの違いを表現するのに一番わかりやすい喩え、それは
日本のプロレス=G1クライマックス
アメリカのプロレス=ロイヤルランブル

これが最適解ではないでしょうか。

共通点はたったひとつ

続いては共通点について。ですが、これはもう簡単です。
どちらも「プロレス」だということ
それ以上もそれ以下もありません。この言葉さえあれば日本とアメリカだけじゃなく、世界各国のプロレスを楽しめます!

今回のまとめ。

プロレスは万国共通
でも、各国特有の風習やノリはあるから
そこはちゃんと察して楽しもう

英会話はできない私ですが、アメリカの応援スタイルのおかげで、マジかよ!ってときに自然と「holy shit!!」と口に出るようになりました。
プロレスは知識の源、です。

では、またここで。

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