主人公ってたーいへん、の話

コラム

プロレスは選手それぞれの個性と自己表現とストーリーが絡み合って、それをファンが支持したり期待を寄せたりして繁栄していきます。支持や期待が膨らめば人気を博し、団体の主人公になることができます。
各団体にたくさんいる所属選手や参戦選手の中で、主人公の証であるのが「チャンピオン」です。チャンピオンを主人公として展開が広がり、その主人公が入れ替わることで新しい景色を作り上げることができます。
ですが、必ずや主人公の人気が一番ではありません。むしろ、主人公になると人気の面ではトップになれないことが多いです。
今回は、プロレスにおける「主人公の難しさ」についてのお話です。

チャンピオンは主人公である

主人公が人気でトップになれないというのはマンガやアニメの世界では顕著で、長期連載作品でキャラクター人気投票が行われると、主人公は1位になれず、雰囲気が全く異なる仲間のキャラやライバルが1位に選ばれるケースが多いです。
ただ、その作品で1位を獲得したキャラがその後のストーリーの中心になっていくのかといえばそうではなく、あくまでサブはサブ、主人公は主人公のままです。逆を言えば、その人気のバランスこそが作品への評価や人気の高さといえるでしょう。
プロレス界でもその傾向はあり、この選手がチャンピオンになれば団体の景色が変わるとファンから期待を集めて主人公になる人は多いです。ただ、その数か月後には人気や実力に陰りが出るわけではないですが、支持の勢いは止まってしまいます。そしてまた別の選手が支持され始め、声援も偏り、主人公が交代していくのです。
最近は半年でも長期政権と言われ、短い場合は数日でチャンピオンが交代する時代。年単位でチャンピオンに君臨し団体の主人公でい続ける選手はしばらく現れていません。
昔のような絶対的エースのワントップ体制ではなく、今は複数スター制でありスター持ち回り制なプロレス界なので、主人公になる選手が頻繁に入れ替わります。主人公に長くい続けられないのは、ファンの支持であり期待の波が細かく激しくなってきているという証でしょう。

なぜ主人公が一番人気になれないのか

主人公であるチャンピオンが長い期間人気をキープできない要因として考えられるのは、
・メインでの起用や注目度が上がることで露出が増え、見慣れてしまうこと
・チャンピオンを敵対視するライバル選手の方が魅力的に見えて支持を得にくいこと
・失敗は転落に繋がるので、常に失敗できない、即ち失敗を恐れず突進する気持ちが薄れてしまうこと
・強過ぎると注目ポイントが「勝ってほしい」よりも「どうやったら負けるんだ」「誰が勝てるんだ」とチャレンジャー視点になってしまう
・主人公がいる中心部分よりもそことはやや離れた場所にあるストーリーが新鮮でファンの視点が移ってしまうこと

が挙げられます。ファンも主人公の選手よりも、夢や目標に向かっているこれから主人公を目指す新しい選手に感情移入がしたくなります。プロレスは自身の観戦歴と一緒に若い選手の成長を楽しんでいくジャンルなので。
根本的なこととして、奪おうとする側、勢いをぶつける立場と、守ろうとする側、迎え撃つ立場という状況の違いが大きいです。球技などほかの競技でいえば、チームが攻めるときと守るとき、どちらの応援が盛り上がる?といえばイメージしやすいでしょう。ドラマなど創作話でいえば、男女が結婚するまでの紆余曲折話は面白いけど、結婚してからの順風満帆話には興味ないわ、ということです。

主人公がいるからライバルが輝く

では、プロレスの主人公、チャンピオンは脇役なのか。といえばそうではありません。
興行の軸はチャンピオンを軸に動いていくので、団体側も当然注目させないといけませんし、人気が落ち着いても強い王者であれば「新しい主人公を作り出す現在の主人公」でいてもらわないといけません。主人公がいるからサブのキャラが人気投票の1位になるわけで、サブキャラだけの作品は面白くなんてならないはずです。
また、今の主人公も最初から主人公だったわけではありません。支持や期待の時代を経て、主人公になったのです。
ですが、その前で述べたように、主人公であり続けることは並大抵のことではないのが現実なのです。

今のプロレスの主人公、スゴいよ!

で、ここまでこの話をしてきたのには訳がありまして。
いわばここからが言いたいことです。もう後半ですが。

現在の日本のプロレス界。主要団体も含めて多くの団体で、求心力もカリスマ性も支持も人気も変わらない、むしろ上げている状態で、半年近く主人公でい続けているチャンピオン、主人公がたくさんいるのです。実はその傾向はとても珍しいことで、凄いことです。
主人公のままトップをキープすること、わかりやすく言えば変わらないことの難しさは選手も団体もとても勇気がいると思います。それを多くの団体が実践しているということは、団体と選手とファンのニーズが合致している
すなわち、そうです。現在のプロレスってかなり面白いんじゃないか。ということを伝えたかったのです!

今回のまとめ。

主人公でい続けること
主人公が変わらないこと
その難し
いことができていれば、それは黄金期

人生は自分が主人公、なの?

プロレスは誰もが主人公になれるわけではないです。
トップを目指す期待の選手が主人公になれなかったり、名脇役が突然主人公として脚光を浴びるのもプロレスの面白いところです。
そもそも、人生でも主人公というのは簡単になれるものではありません。
「自分の人生は自分自身が主人公」なんて言葉も耳にしますが、結局はプロレスの主人公と同様「自分が主人公だと思える時間がどれだけ長いか」が重要なんだと思います。
なんて偉そうに言ってますが、私としては、自分もそれ以外も主人公なんて誰だっていいんです。楽しければ。という思想の達観派です。

では、またここで。

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