2月19日は「プロレスの日」なんです。
1954年のこの日、東京の蔵前国技館で、日本初の本格的なプロレスの国際試合(力道山・木村政彦 vs. シャープ兄弟)が開催されたことが由来です。試合を中継した広場の街頭テレビには約2万人が集まったといわれています。
プロレスが国民的な人気や知名度を得たのも、すべてはこの一戦からといっても大げさではありません。
当時の日本は終戦から10年足らず。その時代を生きている人たちにとって大戦の傷は完全に癒えきっていない状況。そんな背景において外国人プロレスラー相手に強さを見せつける力道山の姿に、人々は戦中戦後の日本を投影させ、興奮し、溜飲を下げ、日本はここまで強くなったんだ、と勇気づけられたのでしょう。
この熱狂は日本中の誰もがプロレスに「感情移入」できたことで生まれたのです。

ここで本題であり、いきなり結論です。
プロレスは自己表現の競技ということは過去の記事でも述べましたが、支持や関心や繫栄はすべて、プロレスラーが「どれだけ観客を感情移入させるか」という部分が担っています。
最高のプロレスラーとは
現在のトップレスラーのひとり、内藤哲也選手がインタビューで
「僕の中で最高のレスラーは、一番感情移入できるレスラー」
と語っていました。
さすが内藤選手。単刀直入に、これが結論です。
プロレスラーの自己表現において最重要なパーツやスキル。それは、フィジカルでも、テクニックでも、ビジュアルでも、年齢でもなく、「観客に感情移入させる能力」なのです。

感情移入が重要なジャンル
競技やステージなどすべてのエンターテインメントは、演者(与える側)と観客(見る側)のふたつで成り立っています。
もちろん、感情移入がなくても楽しめるものこそがエンタメ。
そして、感情移入にはある程度の予備知識が必要です。
プロの野球やサッカーなどのスポーツ系では、選手のプレイや戦略の駆け引き、チームの勝敗でファンは一喜一憂します。その選手の経歴や相手選手との関係などの視点もできますが、大多数の観客は結果が大切でそこを注目はしていないでしょう。
歌手やアイドルなどの音楽系では、メロディーや歌詞が響いたり、ダンスやファンサービスなどのパフォーマンスで満足できます。特別な瞬間や光景でこれまでの道筋や苦労を感じしみじみすることはあっても、ライブ中ずっと感慨深くなることは少ないです。
演劇やミュージカル、歌舞伎などの舞台系では、ストーリーや登場人物に心が打たれるものです。出演する役者さんの出身やその作品との関わり合いを感じながら鑑賞していては物語に集中できません。
というように、ほとんどのジャンルは、感情移入の有無は気になりません。
ですが、プロレスはちょっと違います。与える側が見る側に感情移入させることを重要視すべきジャンルかと思うのです。
その分、敷居が高いようなイメージもあるのですが。

感情移入で変わるプロレスの見方
もちろん、感情移入がなくてもプロレスは楽しめます。
人間ってこんな動きができるのか!とか、攻防が激し過ぎて言葉では表現できない!とか、試合そのものでも存分に満足させてくれます。自信をもって面白いと言えるジャンルです。
ただ、試合の結果、選手の動作、試合後の言葉、それらで感じる選手個人が持つドラマを通した感情移入というプラスアルファがあればさらに心を揺さぶられ、もっと追いかけたくなります。
派手な攻撃、驚嘆する受け、それがプロレスを広めるきっかけであるのは言わずもがな。そこで入ってきたファンの人をそれ以上に好きにさせる要素こそが感情移入。
ゆくゆくは地味な展開の試合でもテーマがないようなカードでも感動して、初心者のお客さんから「この人、なんでこんな場面で泣いてるの?」と不審がられるほどに感情移入ができるようになります。
そして大事なのは、感情移入に正しいも間違いもありません。
ヒールレスラーでも、初参戦の外国人選手でも、デビュー間もない新人選手でも、プロか素人かわからない有象無象でも、感情が動かされたら流れに逆らわず心を委ねてみてください。試合の色が大きく変わるでしょう。
そのために、発信される情報は可能な限りインプットしてみてください!
共感と想像とプロレス
今回のまとめ。
感情移入できるできないで
プロレスは大きく印象が変わる

プロレスラー、そしてプロレス観戦で、感情移入がどれだけ重要なのかを書き連ねてきました。
では、はじめてプロレスを見る予備知識のない人にも初見で感情移入させることはできるのでしょうか。
それは選手の表現の仕方と自分をどれだけ客観的に見られるかが大事であって観客全員がプロレスラーとして見ているリングで出すべきは自身のキャリアやキャラクターに…おっと!プロレスの重要な部分のお話なので、いつも以上に熱が入ってしまいました!ここはトランキーロ、ですね。
感情移入できる選手とはどんな選手なのか。感情移入させる方法とは何か。
そういったことを次回お話します。

ちなみに、冒頭の「プロレスの日」。これとは別に「プロレス記念日」というのがありまして。7月30日がそうなんですが。
こういう「どっちだよ!」という曖昧さが実にプロレスっぽいな、と感じるのです。
いいんですよ、毎日が「プロレス何たらの日」でも。
では、またここで。