反則5カウントで何ができる?の話

コラム

いきなり極論です。
人間をはじめこの世に存在する生きものはすべて、生まれたその瞬間から「生涯」という名のカウントダウンが開始され、それがゼロになった時点で命が尽き最期を迎える、そういうものだと思うのです。
カウント開始の数字は人によって異なりますし、カウントの速さも人によって遅かったり早かったりします。
そして、自分の残りカウントがいくつなのか、どれくらいの速度でカウントが進んでいるのかは自分ではわかりません。誰も知ることができません。
決められたカウントは減るだけで増やすことは不可能。そんな自己管理ができないカウントダウンに、流されるのも、抗うのも、意識し続けるのも、気にしないのも、それぞれ。
その時間のそれぞれの過ごし方、それが「生きる」というものではないでしょうか。

と、インチキ思想家のようなことを言ってますが、真に受けなくていいですよ。
これはプロレスの話に繋げるための詭弁ですので。
ということで、今回はプロレスの大事な要素である「反則の5カウント」についてのお話です。

反則は5カウントまで許される

以前、このサイト内の記事(第22回 レフェリーってなんだろう、の話 )で
プロレスにおける反則は5カウント以内までは許される
これこそが曖昧の源、プロレスというジャンルを象徴する最強のワード
という言葉を使い「反則は5カウントまで」について軽く触れました。
そして、反則だけでなくフォールや場外も含め、カウントの速度も開始タイミングも規定はないこと。さらに、厳格であれ理不尽であれ、その試合を裁くレフェリーには絶対的な権限があるということも述べています。それは念頭に置いてください。
そもそも、プロレスでなぜ反則行為は5カウント以内なら許されるのでしょうか。まずはそれを考えてみます。

反則カウントがある理由

5カウント以内であれば反則が可能。ということは、それをするもしないも自己表現のひとつ。
そのカウントを使って、緩急のあるドラマチックな試合展開を作ることもできますし、自分のキャラクターを観客に伝えることもできます。
逆に5カウント以上の反則行為は負けになるルールなので、その時間内でここまでやれるという技量の視覚的強調にもなります。
このように、ドラマキャラクターテンポイデオロギー、それらを観客に伝えるうえで重要なパーツ、そして試合展開のアクセントにもなるのが反則の5カウントというものです。
このルールが存在しなければプロレスは栄えていなかった、といっても過言ではありません。
反則が5カウントまで許される理由。それは、プロレスは肉体を駆使した自己表現の競技というエンターテインメントだから、です。

5カウントでできる反則とは

では、この5カウントという猶予。5秒ではなく5カウントという時間。
この中で、選手は果たして何ができるのでしょうか。
定番の反則行為だけではないはずです。
ここからは相手を倒すことに繋がる「反則5カウントで何ができる?」を考えてみます。

急所を蹴り上げる
(当たってしまえば一撃で流れを変えられるので、現時点で一番効率が良い)
イスやベルトで殴打する
(証拠隠滅のための時間が必要なので、不意打ちの一撃のみ)
首を絞めて失神させる
(かなり弱ってなければ相手が防御や抵抗できるので難しい)
悪口を言う
(簡潔なものなら可能だが、そもそも声を出して相手を罵ることは反則ではない)
無視する
(カウント中だけ無視をしたところで相手にダメージは与えられない)
観客のひとりを凝視する
(目を合わすことで観客に威圧感を与えられるが、それはただのファンサービス)
ストレッチ
(体のこりをほぐし血行を良くする効果があるが、そもそも反則ではないし相手に隙を与える)
控え室泥棒
(控え室へ戻るには時間が足りないのと、戻れないとリングアウト負けになるためリスクが高い)
エアコンの設定温度を変える
(汗かきの相手ならスタミナを奪うことができるが、自分自身も不快にはなるので痛し痒し)
オレオレ詐欺
(相手が電話に出たところで時間が足らず切らなきゃいけないので要件を伝えるのは厳しい)
床に食べものを落としてもセーフとみなし食べても大丈夫
(気持ちの問題)
LINEチェック
(短いメッセージ1件が限界で返信はスタンプ以外困難、既読が付くので試合後が好ましい)
コーヒー飲んでほっと一息
(あくまで試合中なので、気を抜いてはならない)

ざっと思いついたものを挙げてみました。
なるほど、ほぼすべてが5カウントでは難しいんですね。

巧妙なルールを駆使する超人たち

このように、曖昧なスピードの5カウントであっても、自身のためにひとつの目的を完遂し効果を生むことはかなり困難なのです。
そもそも反則というのはやってはいけない行為なので簡単にできては困りますから、可能なことがほぼない状況も当然のことですが。
日常生活において「今から5カウントだけ何やっても許すから好きなことしていいよ」と言われたらあなたは何をしますか?
すぐに自分が有利になる行動をとることはできますか?きっと、できないと思います
何かできそうで、実はできない。それが反則の5カウントなのです。実に巧妙なルール設定ですね。
そんな簡単にはいかない「5カウントで何ができる?」ですが、反則負けにならないようレフェリーの目を盗むなどの巧妙なブラインドのつき方で利己や私欲のための行動をすぐに仕掛けることができるのが、そう、プロレスラーという人たちなのです!これってすごくないですか?
プロレスラーは超人であると言われる理由、プロレスが非日常の具現化と言われる理由はこんな部分にも表れていると思います。

心のレフェリーが数えるカウント

生まれた瞬間からはじまる「生涯」のカウントダウン。その時間内で人はそれぞれの「生きる」を満たしていきます。
プロレスにおける反則の5カウントは、生きることの象徴なのかもしれません。何をすべきか。できるのかできないのか。
ゆっくりだったり早かったりと速度は都度違いますが、カウントダウンを数えるレフェリー、それは自分の心の中にいる縦縞のシャツを着たその人です。

今回のまとめ。

スピードが遅くても早くても
カウントの範囲内でやれることをやっておけば
きっとそれが結果につながる

でもこれだけしっかり言っておきますね。
人生において反則をすることは、たとえ1カウントでも認められません!
一発で反則負けです!
レフェリーが見ていようが目を盗もうが、反則は絶対にしてはいけません。
もし反則の5カウントを味わいたければ、プロレスラーになってください
「反則が5カウントまで許されるから、プロレスラーに、なりましたっ!」という新人選手が出てきたら、それはそれで嬉しくもあります。

では、またここで。

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