記者会見はどうあるべきか、の話

コラム

世間に向けて何かを発信したい。伝えることがある。釈明する。謝罪したい。そんなときに行われるのが記者会見
みんなが自分の話を聞いてくれる大事な場であるのは間違いありません。ですが、その会見での発言や態度ひとつで世間の印象が良い方にも悪い方にも大きく変わることもあります。
この記者会見という機会を上手に利用し、言葉巧みに自身の印象向上や信頼回復を図れる者もいれば、おぼつかない物言いで自身の無学さ稚拙さ語彙力のなさがあらわになり、逆効果で終わってしまう者も。
記者会見とは謂わば自作自演の印象操作ゲームなのです。

この70年間、社会も政治もプロレス界も多種多様な変化を見せていますが、記者会見という場は変わらず存在し続けています。
そんな大事な記者会見、今のプロレス界ではどう利用されているのでしょうか
最近の傾向を踏まえて、プロレスにおける記者会見のあり方について考えてみよう、というのが今回のお話です。

プロレスでの記者会見のケース

「記者会見」という言葉の定義を探ってみると、
メディアや世間からの要望を受けて開く特定の事実や情報の発表をする受動的な場
とありました。
選手が登壇する記者会見は、大きく分けて
1.次の試合(タイトル戦)や大会に向けた意気込みと質疑応答
2.終わった試合の感想と今後の目標
3.怪我などによる欠場、または回復後の復帰のお知らせ
4.団体の旗揚げ
5.不祥事での謝罪会見

といったことろでしょうか。
規模の大小はあれど1と2がそのほとんどで、それ以外は稀なケース、状況に応じて行われます。
そうです。記者会見という名目ですが、受動的な場ではなく能動的に集まってもらう場。簡単に言うと、プロレスにおいては、記者会見という名の「団体や選手の告知」なのです。

開催の目的と現代の問題点

昭和のプロレス界の記者会見はホテルの大広間で、おごそかで緊張感のあるムードの中、正装をした選手たちが神妙な態度で登壇する殺伐な雰囲気。そういうものだけでした。スーツ姿で乱闘してるイメージも強いですね。
プロレスの幅が広がった現代では、記者会見の手法もその内容も様々です。
現代はネット記事だけでなく、YouTubeなどの動画配信サービスでその日のうちに会見の模様を世界に伝えることができるので、簡単に告知として拡散できます。
団体や個人の活動など、歴史に残る重要な大会でも、どうでもいいニッチ極まりない案件も、全部ひとまとめで「記者会見」という括りです。
アプローチ方法が広くなることは繁栄という側面からも良いことだと思います。
ですが、現代のプロレス界で引っかかるのが「記者会見がただの内輪ノリになっていないか」ということ。
突拍子もない発言や不条理な空気を生み出してインパクトを残すことだけが目的になっていたり、集まった身内に近いマスコミとの馴れ合い会になっていたり、緊張感を逆手に取った「笑ってはいけない記者会見」になっているなど、最近こういう傾向が目立ちます。いや、この手法ばかりです。
昭和時代のような殺伐さをもう一度、なんて回顧主義的な思いは一切持ってないです。ただ、記者会見で緊張感を出せないことを選手自身が諦めている印象があるのです。
そして、発言したいことだけ発言したらノープラン、ゴールが見えずうやむやに閉幕するケースも多いです。
バックステージコメントやインタビューなど言葉での自己主張が苦手な選手もいるでしょう。でも、自分のペースで進められるのが記者会見という場ですよ。
難しいと感じるならば、丸暗記までしなくて良いのである程度の道筋を決めておく。会見を見た読んだファンの期待感を膨らませる意欲だけは持ち続けてください。

外側へ向けて 内側に向けて

どうして記者会見がそういう緊迫感の薄い場になってしまったのだろう。
雑誌や新聞以外も、ネット記事や動画配信という手軽な手法でどの団体でも誰でも簡単に記者会見の場がセッティングできるため回数も増え、価値が衰退しているという背景もあります。
ですがやはり、先ほど記したように「記者会見=告知」になってしまったのは大きいはずです。
情報を出せば目的達成。
突拍子のない発言や行動をすれば話題になって宣伝に繋がる。
だから記事にしやすいよう、カメラの先のファンではなくその場にいる記事を書く記者に向けて投げかける。
これでは固有ファンの外側には響かず、世間に届けるだなんて何年、何世紀必要かわかりません。
記者会見を告知に使うのはまったく問題ないですが、限られた範囲にだけ投げて満足しているのは良い傾向ではない気がします。
「記者会見」を内側に向けただけの「記者発表会」で終わらすのはもったいないですよ。

記者会見は大事で貴重な煽り

記者会見は大事な「煽り」です。
直接対戦する機会がなくても、記者会見だけで見る側の想像力と期待感を何十倍にも膨らますことができます。
ちなみに、アメリカの大手団体では試合に向けての記者会見はほとんど行われません。
なぜなら、リングの上での出来事だけが煽りの場だからです。会場の観客とテレビ中継の視聴者が見ている場だけで、次回の対戦相手の決定やそれへのアジテーション、因縁や抗争の展開などのすべての「告知」が行われます。
本来ならば日本のプロレス界も同じような手法で情報告知と共有をしたいのですが、毎週のレギュラーテレビ中継が希薄で情報を簡単に届けることができない状況では難しいのもわかります。
そんな状況だからこそ、選手の生きた声を届ける貴重な場として記者会見をしっかり活用してほしいのです。
喋りが上手くないと思っている選手ならば、しっかりしたプラン立てをして会見の時間を自分のペースに引き込めばいい。
その場が盛り上がるだけの奇抜な発言や行動をするなら、やりっぱなしではなく後始末のことも考える。
試合より記者会見が面白かったと本末転倒なことを言われないように、爪痕残そうと無茶してハードルを上げ過ぎない。
会場で取材をするマスコミは、もっと興味を持って質問を。
できれば正装で。
その選手や団体に馴染みのない人が見ても、内容と要点が伝わるようわかりやすく。
内輪ノリにならないように。
ただでさえ入口の狭いイメージのプロレス界。ご新規さんや初心者さんも入りやすい記者会見を!

記者会見を制する者こそが

プロレスに限らず記者会見という機会は生かすも殺すも当事者次第
その場を作るのも自分たち。発言するのも自分たち。
印象なんてものは自分たちで大きく変えられます。
だったらフルに有効活用したいですし、それができる団体や選手が今後プロレス界をリードしていくのでしょう。


今回のまとめ。

記者会見は試合へのサムネイル。
この印象で期待感が大きく変わる。
内側だけでなく外側も狙って!

プロレスに限らず、記者会見って不思議と印象に残りやすいパワーがありますよね。
だって、未だに「ささやき女将」というワードだけであの記者会見の光景が目に浮かぶんですよ。
あの記者会見がなかったら、女将もささやかずに済んだでしょう。
ささやき女将も誕生しなかったでしょう。
ささやき女将という人生で必要のないワードをずっと脳の奥底で記憶しなくても良かったでしょう。
記者会見って、きっと我々が思っている以上にすごいんです。
今後、そんなずっと印象にも記憶にも残る記者会見が見られること、プロレス小僧は期待しています!


では、またここで。

タイトルとURLをコピーしました