厚生労働省の調べによると、最新(2024年)の日本人の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.14歳、だったそうです。
今から70年前の1954年時点では男性63.41歳、女性67.69歳。この間で約20年も伸びました。
ちなみにこの1954年は日本ではじめてプロレスの本格的な国際試合が行われ、その後ブームを巻き起こした記念すべき年でもあります。
医学の進歩や生活環境の整備などで人間の寿命は年々伸びていますが、アスリートたち、その中でもプロレスラーの選手寿命はこの70年で変化しているのでしょうか。
今回はそんな選手寿命について考えてみました。
プロレスのキャリアは特殊
それぞれの競技や選手によって異なりますが、ほかのプロ競技での選手寿命は概ね30~35歳がひとつの山ではないかと思われます。
ピークが過ぎ、怪我を抱え、肉体的や精神的に衰えを感じ、プロとして戦うことが厳しくなったとき「引退」を意識しなければなりません。そのとても勇気のいる決断を30歳を過ぎたころから、早ければ20代からしなければならないのがプロの世界というものです。
プロレスはどうか。
プロレスラーのピーク、いわゆる「全盛期」は、キャリアでいうとデビューから10年ほど経った30~40歳の時期だと言われます。
お気付きでしょうか…。
ほかのプロ競技で引退を意識または決断する年齢が、プロレスラーの全盛期と同じなのです。
キャリアや経験値をを重ねて強くなる競技。なのか、若さやコンディションだけでは一番になれない競技。なのか、見方はさまざま。
ただ、このピーク年齢だけ見ても、プロレスは特殊な世界であるということを改めて感じられます。
60歳過ぎてもプロレスラー
トップレベルの選手になるまで10年近く要するプロレスラー、もちろん各選手の怪我や事情もありますが、その選手寿命はおそらく50歳過ぎ~60歳頃ではないでしょうか。
中には還暦になっても、かなり異例ですが古希を過ぎてもリングに立つ選手もいます。
それくらいの年齢になるとさすがに全盛期の頃の体力や肉体とは程遠いですが、それでもプロレスはできるのです。
高年齢選手が多いほかの競技にゴルフもありますが、プロレスはシニア部門という括りがないので、50歳を過ぎても若手と並んで第一線で戦う選手も大勢いますし、10代の若者が70代の頭を蹴り上げる、なんて非日常極まりない光景も実現してしまいます。
危険と隣り合わせなイメージのあるプロレスですが、なんでこんなに選手寿命が長いのでしょうか。
選手寿命の長さの要因
その要因を4点、挙げてみます。
ひとつは「プロレスが受け身の競技」だということです。
ほかの競技や格闘技だとどうしても相手を倒すことに重点が傾き、自身が攻撃をもらう状況や身を守らないといけないシーンでも防御(受け身)ができず大きな怪我につながるケースがプロレスと比べて多いです。
これは「プロレスは本気じゃない」ということでは断じてありません。
もちろんプロレスでも大きな怪我は絶えず起こってしまいます。ですが、相手の技を受けることがプロレスの大事な部分なので、常にその準備をしている、大怪我をしない(させない)ために受け身の鍛錬を重点的に行っている。というものです。
怪我をしないためのトレーニングや肉体造りが基盤だからこそ長く続けられるのでしょう。
ふたつめに「プロレスラーとしてのライセンスや規定がなく、団体未所属(フリー)でも活動できるので、自分の意志でしか引退を決められない」というものです。
資格や認可や所属契約が必要ない職業はたくさんありますが、プロレスラーもそのひとつです。
話が逸れるのでここではその問題点に触れませんが、これによって才能や人生が切り開かれた人もいます。一方で、世間一般的に受け入れられにくい職業でもあります。
引退してなければその人はずっとプロレスラーのままです。定年もありません。試合のオファーがあればわざわざ引退をする選択は薄くなりますね。
みっつめですが「引退後のセカンドキャリアに保障がない」です。保障がないのは競技選手だけでなく、世の中すべてがそうですが。
プロレスラーはあくまで会社と契約をしている個人事業主。フリーはともかく、団体所属選手でも引退後は契約が切れ仕事がなくなります。
そのまま団体の職員や幹部になったりコーチやスカウトとして契約し会社に残る選手も近年は多くなった方です。が、必ずではないので、選手生活をやめるにやめられない、という現状もあるかと思います。
また、引退後に別の世界で成功する人もいますが、それはほんの僅かの人たち。
ましてや現代は国民的有名選手が出にくい状況とあって、その名前だけで仕事が来ることはほとんどないと言ってもいいでしょう。
現役生活中に充分稼いで新しい事業を始める人もほかの競技では多く見かけますが、プロレスで有り余るほどのお金を稼げるか…というとこれも難しいのが現状です。
だから怪我しても現役を続けないといけない。引退できない。選手寿命は自然と伸びる。
私は常々、選手が安心して試合をし、安心して引退できる、内容に見合った収入を得られる、引退後のケアがしっかり整った組織がある、そんなプロレス界になってほしいと願っています。命を削って戦っている選手のために。
今よりもっとプロレスが繫栄してほしい理由のひとつがそれです。
やめられない一番の理由
そして最後のひとつ。それは、
「プロレスが大好きで、面白くて、やめられない!」
これが一番大きいと思います。
見てるだけでこんなに楽しくてずっと見たいと思わせてくれるのですから、選手はもっと楽しくてやりがいがあってやめられないはずです。むしろ、そうであってほしいです。
それくらいプロレスには引き寄せられる、そして与えてくれる不思議なパワーがありますから。
安心して引退ができるプロレス界に。
一方で、プロレスが好きな選手の活躍をプロレスが好きな私たちがずっと見続けられるプロレス界に。
そんなときが来るまで、応援し続けますし、好きでいますし、多くの人に見てもらいたいです。
そして「プロレス、すげー!」って影響された若者がひとりでも多くプロレスラーを目指してくれたら、選手寿命の平均年齢も下がるのです。
今回のまとめ。
プロレスラーは、終身稼業。
プロレスは、永久機関。
すっと続けたくなる、ずっと見たくなる、それがプロレス。
最終回もシーズン終了もないジャンルのプロレスを好きになったんだ。
覚悟はできてるよ。どちらかが果てるまで続けていくよ。
そうか!
人間の平均寿命が伸びたら、それだけ長い時間プロレスが見られるじゃないか!
不老不死のお薬を買いに行こう。
では、またここで。