プロレス大賞デモクラシー、の話

コラム

本日、毎年恒例「東京スポーツ新聞社制定 2025年度プロレス大賞」の発表がありました。
昨日(12月16日)東京スポーツや各マスコミ関係者、OB選手の小橋建太さんら19名で選考会が行われたようです。
会議の内容は例年通り我々には見えない内側の世界ですが、各賞の結果を確認し、これも例年通り思うことがありました。今回は「2025年度プロレス大賞発表を受けての感想と意見」についてのお話です。

各賞受賞者はこちら

まずは、発表された2025年の受賞者を改めて確認します。
【MVP】
上谷沙弥(STARDOM)
【年間最高試合賞】
清宮海斗 vs OZAWA
1.1 日本武道館/プロレスリング・ノア)
【最優秀タッグ賞】
Knock out brothers(Yuto-Ice & OSKAR/新日本プロレス)
【殊勲賞】
KONOSUKE TAKESHITA(AEW/DDT/新日本プロレス)
【敢闘賞】
Sareee(フリー)
【技能賞】
棚橋弘至(新日本プロレス)
【女子プロレス大賞】
上谷沙弥(STARDOM)
【新人賞】
武知海青(DDT)

感じたモヤモヤの正体は

どの賞に誰が選ばれるのか、どんな選手が候補に挙がるのか、毎年楽しみですが、結果を知った後にも毎年ぶつけどころのないモヤモヤが残るのがこのプロレス大賞というもので、今年もなかなかどうしてそんな気持ちでした。
ただ、受賞した選手や試合については諦めに近い納得もあるとはいえ、ここ数年は予想の範囲内で納まっているので違和感はさほどなく、派手な忖度さは感じませんでした。異論なし、です。
今年のモヤモヤの原因は「プロレス大賞って、何だろう?」という根本的なものです。
この賞は選考委員会の皆さんが候補をノミネートし、議論や検討後に投票を実施して決定させる多数決という民主主義に基づいた方式で決めるものなので、それぞれの「ファンの正解」ではありません。あくまで、東スポを中心とした「選考委員会の正解」です。
ですが、歴史的にそれが「プロレス界の正解」であるのは事実です。それはもう認めざるを得ません。
それも踏まえて「このままで良いのかな?」とも思うのです。

各賞への感想

では、各部門の受賞者や候補について、個人的な感想を。

【新人賞】
この賞は「デビューから3年以内の選手が対象」なのですが、規定が定められた当時と比べると大きく環境も変わっています。3年以内に団体のトップに躍り出る選手も多いです。ノミネート選手を見ると、今回最優秀に選ばれた武智選手が満票になってもおかしくない気もしなくはないですが、おそらく選考委員の中での「新人」という括りが人それぞれで共通されていないのかも、と感じました。

【殊勲賞・敢闘賞・技能賞】
これも新人の規定や括りと同様で、技能はまだ理解できますが、何をもって殊勲、敢闘なのかが曖昧過ぎます。今回は棚橋選手が受賞しましたが、ラストイヤーで活動的に他団体に出向いてキャリアを生かしたファイトをしてきたという選考理由は、技能というより「功労賞」に近いのでは、と思ってしまいました。テクニックだけでなくプロレス頭が冴えてる賞ならば候補選手は山ほどいます。

【最優秀タッグ賞】
9月の帰国後にK.O.Bが発火させた活性化は現在の新日本を見れば一目瞭然。久々にタッグ中心で活動するコンビが現れたことで来年以降への期待も大きいです。逆を言うと、じゃあそれまでの9ヶ月間のタッグ界隈、どうしてたの?大丈夫?と言わざるを得ないのが現状です。負傷で斉藤ブラザーズが活動できなかったのもありますが、タッグ戦線、そんなもんじゃないでしょ、と残念に思えました。

【年間最高試合賞】
毎年必ず意見が分かれる部門なので、どの試合が獲っても納得、どの試合が獲っても疑問にはなります。でも、今回受賞の最優秀試合はほとんどの人が納得に近い印象なのでは。内容もそうですが、OZAWA選手のインパクトは強烈でした。この賞も、内容や印象や背景など判断部分が曖昧ですが、確かに一番刺激があった試合です。しかも、ノア生え抜き所属選手同士のシングルで受賞は重要です。

【MVP・女子プロレス大賞】
何名か候補に挙がったのも、票が分かれたのも含めて、いろいろな部分で納得です。予想されていたことでしたが、今年のMVPは「はじまりのはじまり」を感じさせてくれました。
ひとつ気になった、というか、今年のプロレス大賞の選考で一番気になった点があって、そのままスライドで女子プロレス大賞も受賞、ってのはどうなんだろう…?と。それは別でも良いのでは?というのがモヤモヤです。例えばWWEのイオ選手が女子大賞でも良いのでは。
そして今回、上谷選手が史上初の女子選手でMVP獲得となったことで、今後の女子プロレス大賞という部門の存在理由がなくなりました。大きな転換期だと思います。もし来年以降もこの賞を残すなら、女子がMVPの年は「男子プロレス大賞」を作らなきゃいけませんからね。
あと、上谷選手に関してで言えば、ここまですべてを実現させてしまう大成功でうまくいき過ぎな1年の次にやってくるのは俗に言う「アンチが大量に湧く」かもしれません。団体だけでなくプロレス界の頂点になった上谷選手がそういった声をどう塞ぐか、黙らせるかがさらに大きな存在感になるためのトリガーでしょう。
ちなみに「東スポだったらあるかも…」という私のMVP予想は、棚橋選手でした。

2025年度プロレス大賞の総括

各賞のノミネートは一時期に比べるとプロレスの視点が広がっていて良い傾向だとは思います。ですが、毎年のことながらやっぱり「欠場すると候補から外れる」システムは歯痒いですね。今年は特にその時点で有力候補だった選手の負傷欠場が多かったので。
そして、団体ごとで見ると、全日本が一部門も受賞できなかったのは意外でした。昨年以降、勢いは上昇中だと思っておいたのでなおさら。
一番大きなことは、やはりMVPと敢闘賞の女子選手の受賞、そして各部門のノミネートも含めて、女子プロレスが完全に男子のそれと同じ括りになったと印象付けたことでしょう。
歴史ある賞が男子と女子を同じ土俵で判断することが明確化されたことで、来年以降の選考はさらに難しくなるはずです。

今こそプロレス大賞の変革期

先の感想でも述べましたが、今年の女子MVPを受けて、プロレス大賞も大きな変革をする時期に差し掛かったのではないでしょうか。
選考方法はおそらく変わらないので、各賞の大幅な見直しが必要だと思います。
・女子プロレス大賞の存続理由と、もし続けるのであれば「男子プロレス大賞」も設立。
・時代に合わせてタッグ賞を「最優秀ユニット賞」へ移行。
・新人賞のルールを変更(キャリア2年以内)し「ルーキー賞」へ名称を変更。
・相撲に倣った殊勲・敢闘・技能の三賞を廃止して金賞・銀賞・銅賞などひとつの賞にまとめて3名へ賞を授与する。
・ベテラン選手や長期欠場明けに復帰の選手を対象とした「カムバック賞」の設立。

…など、現代に添った形態のプロレス大賞に近付けられるアイデアはたくさん出てきます。
そして、一番重要なのが、民意を反映させること。
東スポ読者を一般枠代表として選考委員に選出したり、読者のアンケートで票を加算するシステムは難しいですし、大事なのはそこではなくて。
今年の顔触れのように、選考委員会の過半数が「東スポの中の人」というのだけはどうにかならないかな…と毎年感じるのです。たったひとり減らして過半数割れの人数にするだけで民意反映度が大きく変わるのですが、まずはそこだけでも変化を。
今では選手からも「プロレス忖度大賞」と揶揄されるような位置になってしまったこの賞をより権威あるもので維持するために、各賞の規定や名称、選考委員の自社率の改革が行われるのならば、今年は良い機会です。
ぜひ、根源の部分も「はじまりのはじまり」になることを期待しています。

モヤモヤの対処までが大賞の対象

この賞はよほどのことが起こらない限り来年以降も開催されるので、来年の今頃もきっと同じモヤモヤ気分になっているでしょう。
でも、今ではこれもプロレスの楽しみ方のひとつ、と思えるようになりました。
受賞者の顔触れが大きく変わる予感はおそらく確定。ただし、どの賞にどの選手が選ばれるかは正直まったく不確定。数か月先の未来の予測も派手に覆されるのがプロレスの魅力なので、1年後またモヤモヤさせてもらいます。
プロレス大賞の結果でモヤモヤした気持ちは、各部門のプロレス大賞を自分が選んで落ち着かせる。ここまでがプロレス大賞の意味と意義なのですから。

今回のまとめ。

プロレス大賞という計りを使って
自分のプロレスへの
を対照する

プロレス大賞、受賞された選手の皆さん、おめでとうございました!

では、またここで。

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